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イーサリアムブロックチェーンは2022年、PoW(Proof-of-Work)からPoS(Proof-of-Stake)への移行が計画されています。
この移行計画は「The Merge」と呼ばれており、かねてから開発が進められていました。現在のPoWからPoSへ移行することで、イーサリアムからマイニングという概念がなくなります。
目次
PoW・PoSとは
PoWとPoSの違いを簡単にまとめると下記のとおりです。
- PoW:大量に計算して報酬を得る
- PoS:預けている額が多いほど報酬を得る
それぞれのメリット・デメリットをみていきましょう。
PoWのメリット・デメリット
PoWのメリット
一番のメリットは不正に強いことです。
PoWの取引承認では、他者より先に計算を完了させなければなりません。処理能力の高いコンピュータを用意した人が有利ですが、それにも限界があります。
そのため特定の者による処理能力の独占が不可能です。
PoWのデメリット
PoWのデメリットは下記のとおりです。
- 51%攻撃のリスク
- 地球環境への負荷
PoWは不正に強いですが、悪意のあるマイナー集団に計算能力の過半数(51%)を支配されると、不正取引が行われる可能性があります。
また、ハイスペックコンピュータを稼働させるための電気代が問題視されています。PoWを採用するビットコインの年間CO2排出量は、オーストリアの年間CO2排出量と同等です。
そのため、PoWの莫大なエネルギー消費が地球温暖化に繋がっていると言われています。
PoSのメリット・デメリット
PoSのメリット
PoSのメリットは下記のとおり。
- 消費エネルギーの削減
- ネットワークセキュリティの強化
PoSはPoWのデメリットを解決しており、「消費電力が少ない」「51%攻撃に強い」ことがメリットです。
PoSでブロック作成者を決定する要素は、ステーキング額です。そのため計算に余分なエネルギーを消費しないため、PoWと比較して99%のエネルギーを削減できます。
また、PoSで51%攻撃を行うには大量の通貨を保有しなければならないのでコストがかかります。それに攻撃を行うことで通貨の価値が下がるので、51%攻撃はPoSでは割に合いません。
そのため、PoWよりもネットワークセキュリティが向上します。
PoSのデメリット
「通貨の流動性が損なわれる」ことがデメリットです。
PoSでは、通貨保有者が利回りを得られるため、保有するメリットが大きい。通貨が売られにくくなり、流動性が失われてしまいます。
The Mergeとは
結論は、PoSをイーサリアムに導入するアップデートのことです。
The Mergeは2022年内に実現すると言われています。
イーサリアムでは、ネットワークの混雑や環境負荷などの課題を解消するために、かねてから大型アップデートが計画されていました。
アップデート計画の流れ
既存のチェーンを稼働させたまま大規模なアップデートを行うため、一度にすべて行うのではなく、複数の段階に分けて実行する計画です。
- 20年末:ビーコンチェーンのローンチ
- 21年末:テストネット「Kintsugi」のローンチ
- 22年3月:テストネット「Klin」のローンチ
- 22年4月:メインネットで「Shadow Fork(ストレステスト)」実施
上記のように着実に進展が見られます。
The Mergeのリスク
The Mergeのアップデートは、非常に大規模であるためリスクが想定されます。
テストを何度も繰り返しているとはいえ、ローンチ後の不具合やバグなどが発見される可能性もあるので注意が必要です。
また、PoSに移行するとマイナーは不要です。そのため、完全にPoSに移行する前にマイナーが他のPoWチェーンに活動の場を移すことが考えられます。
マイナーの数が減ると、セキュリティのリスクも高くなります。
イーサリアム開発者Tim Beiko氏は「マイナーが立ち去りハッシュレート(マイニング速度)が低下すると、残ったマイナーが利益を受け取るだけだ。」と述べています。
最後まで残るインセンティブがあり、マイナー数の低下によるセキュリティリスクはそこまで高くないと見ているようです。
まとめ
今回は、イーサリアムの大型アップデート「The Merge」について解説しました。
The Mergeは2022年内に実行される予定です。
PoWからPoSに変わることで、「消費エネルギーの削減」「ネットワークセキュリティの強化」というメリットがあります。
今後のイーサリアムの展望に注目です。